生成AI活用で遅れる日本企業、突破口は中間管理職に　山崎光春

こんにちは！山崎光春です。

日本企業における生成AIの活用が進む一方、期待を上回る効果を実感できている企業は依然として少数にとどまっている。PwC Japanグループが2025年春に実施した「生成AIに関する実態調査」では、日本、米国、英国、ドイツ、中国の5カ国を比較し、日本企業の現状と課題が浮き彫りとなった1 2 3。

調査によれば、日本企業の生成AI活用推進度は5カ国中で平均的な水準にある。2025年春時点で「活用中」と回答した企業は56％に達し、1年前から13ポイント増加した。しかし、「期待を大きく上回る成果」を得たとする企業はわずか10％で、米国の45％と大きな差が生じている。成果を実感できている企業の割合は横ばいで、日米間の格差は拡大傾向にある2 3。

さらに、生成AI活用の「効果創出」では日本が5カ国中最下位となった。推進部門の設置や経営層のコミットメント、業務プロセスへの正式な組み込み、AIガバナンス体制の整備など、効果を上げている他国企業が共通して持つ体制が日本では十分に整っていない1 3。特に「社長直轄の推進体制」や「専門組織（CoE）」の関与率が他国の半分以下であり、現場任せや試験的な導入にとどまる企業が多い2 3。

一方で、生成AIがもたらす脅威への認識にも変化が見られる。「ビジネスの存在意義が失われる脅威」や「他社より劣勢に晒される脅威」といった外的な不安は減少したが、「コンプライアンスや企業文化への影響」を懸念する声が増加した。これは、生成AI活用が進む中で業務や組織、人材評価のあり方が根本から変わることへの不安や、ハルシネーション（AIの誤情報）による倫理的な懸念が背景にあると指摘されている2。

業界別では、テクノロジーや通信分野が引き続き先行する一方、人手不足が深刻なサービス・運輸・小売業界での活用が急増している2。

日本企業が生成AIで高い効果を得るためには、経営直轄の推進体制や業務プロセスへの本格的な組み込み、情報キャッチアップやガバナンス体制の強化が不可欠だ1 3。これらは効果を上げている他国企業に共通する成功要因でもある。しかし、こうした施策はDX（デジタルトランスフォーメーション）推進でも繰り返し指摘されてきた。

そこで注目されるのが、日本独自の強みを活かすアプローチだ。日本企業には、社員一人ひとりの責任感や自律性、幅広い業務スキル、生成AI活用への積極性といった特徴がある。現場の知識を持つミドルマネジメント（中間管理職）が経営層の戦略を理解し、個々の成果を組織全体の力に昇華することが、今後の成否を分ける鍵となる2。

「個人レベルの成果創出を、組織のベクトルに揃えて大きな力に変えていくことができれば、日本企業ならではの強みを発揮できる」と専門家は指摘する。生成AI活用の格差が指数関数的に広がる中、日本企業には早急な体制強化と独自の強みを活かした変革が求められている1 2 3。